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発明の定義(第2条1項)

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特許法は、第2条1項において、発明を「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義しています。一見理解が難しい内容ですが、下記のように三分節して各用語のポイントを把握すれば、発明の定義を全体として理解することができます。

  • 自然法則を利用した
  • 技術的思想の創作
  • 高度のもの

なお、出願に係る発明は、第2条1項規定の内容を満足する必要があります。なぜならば、請求項に記載された発明が法上の発明(第2条1項)として認められるか否かが、発明該当性の要件(第29条1項柱書)として実体審査されるからです(第49条2号)。

自然法則を利用した

法上の発明は、「自然法則を利用した」ものでなければなりません。審査においては「自然法則を利用していないのならば発明ではない」という観点で判断されます。

自然法則を利用していないものとは、

  1. 自然法則自体
  2. 自然法則に反するもの
  3. 経済法則
  4. 人為的な取決め
  5. 人間の精神活動

などが例示的に挙げられます。

但し、ソフトウェア関連発明において人為的な取り決め等が発明に含まれている場合であっても、全体として自然法則を利用している場合には、発明該当性が認められます。一方、自然法則を利用していないものに該当しなくても、発明の構成要素のうち、課題解決に貢献する要素が自然法則を利用していないものであれば、全体として発明該当性は認められません。

なお、判例:育種増殖法事件(最高裁/H12.2.29)によれば、「自然法則を利用した」というには反復可能性が必要であるとされています。反復可能性は、確率は不問であって科学的に可能性があれば足り、また、出願時にあれば足りる(その後の経過は発明性審査に影響しない)とされています(すなわち、反復可能性の有無と実施可能要件(第36条4項1号)とは別個の概念)。

技術的思想の創作

法上の発明は、「技術的思想の創作」でなければなりません。審査においては「技術的思想の創作ではないものは発明ではない」という観点で判断されます。

「技術的思想ではないもの」とは、技能およびノウハウのように第三者に知識として伝えることができないもの、ならびに、画像データなど単に提示される情報などをいいます。一方、「創作ではないもの」とは、例えば、発見それ自体(創作されていない)をいいます。但し、物の特定の性質を発見し、その性質を専ら利用する発明は用途発明(※主に化学分野)として認められます。

なお、「創作」は主観的に新しいものであればよいとされています。もちろん、特許要件として最終的には「客観的な新しさ」が要求されるのですが、それは発明該当性としてではなく、別途、新規性(第29条1項各号)として要求されます。

高度のもの

法上の発明は、「高度のもの」でなければなりません。しかし、「高度」という文言は、実用新案法における考案のレベルと区別するために設けられたにすぎず、「高度」に該当するか否かは審査の対象とはされていませんので、実務上、気に留める必要性はありません。

(参考)当所管理の発明情報サイト内記事(※外部リンク)

Q.001:特許における発明とは…