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特許を事業経営に活用する時代

事業会社にとって特許制度は「特許権の数を求める時代」は昔のこと、「特許権の質を求める時代」も過ぎ去り、今は「特許を経営のために活用する時代」と言われています(*1)。

特許を事業経営のために活用する時代では、(Ⅰ)強固な特許ポートフォリオを構築して事業の競争優位性を確保するだけでなく、(Ⅱ)知財情報(*2)を経営意思・事業方針の決定に活用することが求められています。


特許ポートフォリオの構築

特許ポートフォリオ(以下、特許PF)によって事業の競争優位性を確保するということは、自陣にいる敵を特許権という武器で追い出し、自陣に敵が来ないよう武器で防衛するということです。少し野蛮な表現ですが、オープン・クローズド戦略でいうところのコア技術が陣地です。

知財情報の活用が重視される昨今ですが、特許PF構築を疎かにすると事業の足をすくわれかねません。そのため、活用に供する特許権を“コツコツ”つくっていくことが大切です。

活用に供する特許権とは何か? -- 天才的な閃きによる発明など様々な回答があると思いますが、(ⅰ)先行者利益をもたらす最先端技術の特許権、(ⅱ)侵害立証性が高い特許権は、安定的・普遍的な解になるのではないでしょうか。


ⅰ)最先端技術

2017年現在、電気・機械・制御分野での最先端技術に「AI(人工知能)関連技術」及び「IoT関連技術」が含まれることは間違いないと思われます。AI技術は完全自動運転車両(Level5)を実現すると予測され、IoT技術はモノが集める情報を活用したサービス、例えばスマートコントラクト技術(ブロックチェーン2.0)と相乗したサービスが社会に浸透すると予測されます。何れも5年後にくる未来でないかもしれませんが、特許権の存続期間は20年;2037年には現実になっている未来だと想像できます。


ⅱ)侵害立証性の高い特許権

特許権が最大の効力を発揮するのは差止・損害賠償請求など排他権を行使する場面です。但し、裁判費用を考慮すると催告段階で解決したい…そのためにはクレームの侵害立証性が重要です。侵害成否を争うとき、「見て明らか」な程度に侵害立証性が高いクレームならば、相手の反論の余地はなくなります。

一般的に「見て明らか」な程度に侵害立証性が高いクレームを作成することは困難です。例えば、電気・制御回路であれば、入出力信号に特徴をもたせたクレームを心掛けることで侵害立証性を高められても、見て明らか…ではありません。アルゴリズム発明に至っては、発明の性質上、侵害立証性を高めるにも限度があります。

ところが、クレームの工夫だけが侵害立証性を高める唯一の方法ではありません。発明の性質上、侵害立証性がそもそも高いものを積極的に創出することもできます。

例えば、HMI/UI発明が"それ”です。技術ポイントが内部処理にあっても、それが製品サービスの表層部分に現れるならば、その表層部分に現れる技術的特徴をHMI/UI発明に仕立てられる場合もあるのです。要するに、発明を「どう捉えるか」ということです。


知財情報の活用

知財情報を事業方針・経営意思の決定に活用するため、企業知財部門に対して知財情報とマーケティング情報とを連関させた提言を求められる風潮があります。従来の知財情報の活用といえば、

  • コンペチタとの特許ポートフォリオを比較するため、及び、対抗特許権創出を目的に自他特許権の権利範囲を画定するために知財情報を活用する「攻撃的活用」
  • 事業経営において、顕在化した知財リスクの有無を把握するために知財情報を活用する「守備的活用」
が代表でした。これに加えて近年急速に必要とされるようになったのが、事業方針・経営意思の決定に寄与するために知財情報を活用する「コンサルティング活用」です。

事業方針・経営意思の決定の際には、膨大な情報が事業部門・経営層に集まります。ビジネスが複雑化・グローバル化するなかで益々情報が増加しているのでしょう。集まり過ぎる情報は意思決定を遅らせます。スピード経営が求められるなかで、それは避けたい。そのために、集まり過ぎる情報を集約してくれる参謀が"もっと欲しい”。情報が集まる部門といえば企画部門以外にもある -- そうだ、知財部門に聞こう!ということでしょうか。

知財情報の「コンサルティング活用」は、一例として、B2B事業(企業向け製品をてがける事業)において、事業の顧客層が望むシステム・サービスを検討する際に、知財情報を活用することが挙げられます。具体的には、事業の顧客層の特許出願情報に基づいて、複数の顧客層が抱える技術的課題、それを解決する手段をカテゴライズしながら推考することができます。そして推考結果は、マーケティング情報と連関させることで、事業部門へ提言する分析結果になり、経営層の要求にこたえる分析結果になり得ます。

情報は、使う目的を明確にしてから分析することで活きてきます。当所では、B2B事業の知財情報の分析ツールとして、課題解決マトリクスを提案しております。「課題解決マトリクス」とは、特定の技術分野における公開特許公報に記載された技術課題とクレームとに基づき、どのような技術課題を解決する技術思想に注力して開発すべきか、その成果として特許出願すべきか、という問いに対する解を可視化したものです。



本ページは企業向け特設ページです。当所はサービス提供にあたり、クライアント様からの御用命に従いながら、併せてクライアント様の特性に鑑みた提案を致します。相互コミュニケーションにより個別具体的な提案を致しますが、思念として特設ページを設けております。


*1. 「特許」は行政処分の一つですが、ここでは表現の簡便化のために特許を名詞として使っています

*2. 知財情報:公開特許公報及び特許公報から得られる情報、特許訴訟情報並びににそれを加工した分析情報と定義